世界で一番尊敬する女性と人身売買のお話

世界で最も尊敬する女性

 

私が世界で一番尊敬する人にお会いしてきました。
彼女の名前はラムカリ カドカ。
Women’s Skills Development Organization、通称WSDOの代表の方です。

英語ではみんなに「マダム」と呼ばれていますが、別にお金持ちの奥様、という意味ではありません。贅沢のかけらもない、優しそうな年配女性です。
不思議なことに、みんなマダムと話すといつの間にか笑顔をになります。初対面であっても、優しさが溢れ出たような彼女の雰囲気に心をほぐされ、すっかりリラックスした状態でいることができます。ゆっくり話を聞いてくれ、笑顔で頷いている彼女と話をしていると、まるでいつの間にか自分のおばあちゃんと話をしているように感じてくるのです。

マダムと通訳をしてくれるナンドゥちゃん。ナンドゥちゃんは24歳、とっても可愛い!

 

若かりし頃、二十歳のマダムが立ち上げたWSDOとは

 

マダムは40以上年も前の1975年、まだ20歳のころ、この団体を立ち上げました。
当時マダムは政府の機関で、女性達に職業訓練を行う仕事をしていました。その仕事の中で、田舎の村にいるたくさんの貧しい人たちの暮らしぶりを知ります。村には学校に行くことができない子供達がたくさんいました。学校がないわけではありません。教科書や鉛筆、上履きなど学校で必要な用具を買うお金が家庭にないため、通わせるわせることができないのです。子供達にとって、そして母親にとって最も必要なのは何よりお金でした。そして女性たちが子供を抱えながらも働くことができる仕組みでした。

そこで、マダムはこのWSDOという組織を立ち上げます。

最初はお金もなく、とても小さな組織だったそうです。けれど政府や地域の寄付金に頼ることなく、自分たちの力だけで一歩ずつ大きくしてきました。現在では500人の女性達がここで働き、この組織を通じて自立していった女性達は累計12000人を越えます。

ここでは、離婚や死別で夫がいない女性、ハンディキャップを持った女性など社会的に自立が難しいとされる女性が仕事を求めてやってきます。

女性達は糸を染色する工程から織り、縫製、検品と製品が出来上がるまでの、すべての工程を学ぶことができます。また、織りの仕事は家に持ち帰ることが可能なので、子供が小さくて家を離れられない女性たちは家で仕事を行えるようになります。

WSDOの活動には、日本からも多くのボランティアスタッフが参加しています。

以前に大阪の阪急百貨店で「サスティナヴィレッジ」という期間限定のPOP UP SHOPに参加させていただいたことがあるのですが、その時に一緒だったア・ダンセの森重さんもマダムをよく知る人のひとり。森重さんは現在、アフリカのブルキナファソでフェアトレードの活動をされていますが、その前はネパールで人身売買を防ぐ取り組みをされていたそうです。これはそんな森重さんからお聞きしたマダムにまつわるお話。

 

ネパールの人身売買と女性たち

 

ネパールでは今でも不正に人身売買が行われ、性的搾取される女性が少なくなりません。そういった売春宿は検挙され、女性たちは解放されるのですが、救出されたからといってすぐに幸せに暮らせるわけではありません。むしろ苦難は続きます。いかなる理由であれ、一度でも性的な仕事をさせられていた女性達に対しては社会的な偏見が深く、彼女たちが自立して生きていく事は非常に困難なのです。

また、幼い頃に人身売買され、長く働かされていた女性達は自分の自我を失くしてしまっている事も多いそうです。例えば女性たちに「チョコレートかキャンディかどっちがほしい?」と差し出しても、彼女達は選ぶことができません。黙って固まってしまいます。長い年月虐げられ、命令を聞くことのみを強要され続けた結果、自分の意思で判断することができなくなってしまっているのです。もちろん自尊心は徹底的に破壊され、まるで人形のようになっているそうです。

WSDOではそういった女性も受け入れているのですが、彼女たちが仕事にかかる際に、マダムが厳しく言って聞かせることがあります。

それは「自分の持てる限りの力を使って、縫製をきれいに仕上げなさい。ひと針でも力を抜いてはいけません。」ということ。地獄のような日々から助け出されたばかりの女性達に、そんな厳しいことを言わなくても…と思ってしまいます。けれど、これには理由があるのです。

WSDOのファクトリーにはたくさんの外国人が訪れます。みんな私と同じように、WSDOの作る商品を愛し、活動を応援している世界各国のバイヤー達です。そんな海外からのバイヤーがやって来ると、マダムは解放された女性達の元へ連れていきます。そして女性たちに向けて、こう言うのだそうです。

「あなたがひと針も力を抜かずに縫製してくれたおかげで、こうして商品を買いたいという人が来てくれたわ。あなたの仕事はとても素晴らしい。こうして海外から人がわざわざ来てくれる程なんですもの。あなたは素晴らしい技術を持った、とても価値がある人間なのよ。いつも一生懸命仕事をしてくれて、ありがとう。」

人間が生きていくために、最も必要なのは仕事のスキルや方法を学ぶことではない。何よりも自尊心がなければ人は生きていけないことを、マダムは知っているのです。

その自尊心を育てるためにわざと「縫製をきれいに仕上げなさい。」と厳しく言いつけるのです。

下は今回撮影してきた、WSDOで働く女性達の様子。
前回、うまくお母さんたちの笑顔を撮れなかったので、今回はできるだけ気配を消せるよう時間をかけてみたら、少しだけうまく撮れました 笑

彼女たちが何を話しているかというと、今度開催されるお祭りで、女性たちの何人かが歌と踊りを披露することになっているらしく、誰が歌って踊るのかみんなで話しています。

「あんたいつも歌うたってるじゃない!あんたやりなさいよ〜!」
「えー!みんなの前でなんて嫌よー!あんたこそ踊りやれば!?」という微笑ましい感じ。

ネパール人は恥ずかしがりな人が多く、日本人と似ているなぁと、いつも思います。

女性達がここに至るまでの経緯はそれぞれ違います。けれど、みんな共通していることは辛い過去を背負っているということ。そんな女性達が、今は笑い声を上げながら楽しそうに、ミシンを踏んでいます。

20歳だったマダムが一念発起し、こつこつと作り上げてきたものがこれなんだと思いました。
マダムはこうして12000人もの女性達の笑顔を取り戻してきたのです。

 

ひとりをサポートすることは、ひとつの種を植えるということ

 

先の日記(ネパールのお母さんたちの工房/1日目)(ネパールのお母さんたちの工房/2日目)で書いたように、私たちがネパール人女性のミナさんと立ち上げた、シングルマザーをサポートするための取り組みは問題が山積みです。もっとたくさんのお母さんをサポートしたいのに、現状では資金もなく、ほんの限られた人数しかできていないことをマダムに話すとマダムはこんな話をしてくれました。

「大切なのは人数ではありません。もちろんお金でもありません。サポートしたいという心を持ち続けること。いくらお金持ちであっても、サポートしたいという気持ちがなければ、女性たちの現状は変わらないでしょう?たった一人のお母さんでもいいんです。そのお母さんの息子が学校に行けるようになり、いずれお医者さんになってたくさんの貧しい人たちを救う。私はそんな例を今までにもたくさん見てきました。一人を助けることは、いろんな将来の可能性を変える大きな力を含んでいるのよ。」

一人をサポートすることは、未来の花を咲かせるための種を植えるような行為なんだと思いました。その花はやがて果実になり、周りの人たちを食べさせていけるようになる。

自分の無力感に思い悩んできたこの数日間。これほど救われる言葉は他にないだろう、というような言葉をいただき、笑顔で頷くマダムを見ていると、この雰囲気は前にもどこかで感じたことがあるな、と思いました。優しくて強い、人を心から全肯定できる芯の強さを持った笑顔。安心感を与える、ちょっと茶目っ気があって親しみのある目。ああ、そっか。ダライ・ラマを初めて見た時に感じた空気だ、これは。

マダムを身近に見ていると、私と彼女の間には歴然とした人としてのレベルの差を感じますが、目指すのは勝手 笑

人生をかけて少しでもマダムに近づくことができればと、そう思います。
マダムがしてきたように、未来の花のためにコツコツ、ひとつずつ種を植えていきたいと思います。

そんなマダムのいるWSDOで、現在LIFE IS A JOURNEY!のオリジナル商品を作ってもらっています。数量の関係上、結局サンプルを作らないことになったので一発勝負!

どんな形になるか、すごくドキドキ 笑

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